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BMW525iツーリング簡潔評
バルブトロニック化される前の5シリーズを簡潔に最終評価する | 2005/07/08 |
■インプレッション
このクルマの特性を語るには、2つのデバイスが理解できればいいだろう。一つはアクティブステアリング、もう一つは6速ATである。
アクティブステアリングはあまり評判がよくない。これに対して、なぜ評判がよくないのかが、これまでのあらゆる評価の中で決定的に明らかに出来ていないように思う。あくまで個人的な意見だが、ステアリングギヤ比とホイールベース間のどの位置にステアリングホイールがあるかというのは、相関関係を持っている必要がある。ただしこれは低速でステアする場合に限られる。たとえば、前よりに座るバスやトラックなどキャブオーバータイプのクルマでは、そのギヤ比はスローでなければならない。また、運転席が後方にあるロングノーズタイプのクルマでは、ギヤ比はクイックでなければならない。これは、内輪差と人間の感覚に起因している。クルマが円を描くとき、低速では内側後輪がもっとも円の中心に近くなる。また、たいていのドライバーは、切り始めてから狙ったステア状態になるまでの経過を、無意識に考慮している。この無意識に考慮したステア方向の遷移に掛かる時間的間隔と、運転席を通過して後輪軸がインのアペックスに付くまでの時間的間隔が一致しないと気持ち悪いわけである。運転席から後輪軸までの距離にふさわしいギヤ比は必ずある。後輪軸上に座るようなクルマではいくらでも調整が効くし、クイックでなければ却って操作が遅れるかもしれない。世の車を見渡せば、たいていこの法則に納まった車が多い。この点で、アクティブステアリングの低速域でのクイックな特性は、世の一般的な傾向に逆らった特殊なフィールを提供することになった。ただし、運転自体が習慣に依存した行為であるため、いくらでも解決できる問題だろう。オーナーには、その問題もやがて問題にはならなくなる。
6速ATはマニュアルシフト愛好者にはうれしいセッティングになっている。スリップ領域を、エンジンが低回転域で稼動している場合に押さえこみ、ほとんどの場合でトルクコンバーターがロックアップされている。マニュアルモードでの操作では、Dレンジでのギヤチェンジよりもシフトショックが強めになっているが、これは演出とも受け取れる。シフトチェンジした実感が得られるわけだ。ただし、マニュアルモードでもレブリミットには程遠い回転でオートシフトアップするケースがあった。これはスロットル開度もモニタして、あまり加速力を求められていないと判断した場合はシフトアップするロジックになっているのかもしれない。なお、Dレンジでの走行では、かたくなにギヤチェンジを拒む傾向が強かった。より経済性に重きを置いているセッティングなのだろう。
排気音がこれまでと大きく変わっている。ことあるごとに「シルキーシックス」と表現されるBMWの6気筒エンジンだが、ほんとうにシルキーと表現できる、衣擦れのようにシュルシュルと聞こえるサウンドに調律されている。ポルシェやメルセデスベンツなど、どのメーカーが始めたか不明だが(もしかすると日産から始まったかもしれないが)、新世代の6気筒サウンドが5シリーズにも与えられている。バルブトロニックになっても、この排気音の調律方向は変わらないだろう。
今回音声を用意できた。コースとしては平地からすぐにアップダウンのくねった道にさしかかる、鴨志田から環状4号に抜けるルートを走行している。エンジン音が大きくは無いため、少し音響特性を補正した。実際に聞こえてくる音よりも、衣擦れ成分が少なくなっている。
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