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ギャランフォルティス一挙試乗
ギャランフォルティスはランエボの残り香なのか? | 2009/04/12 |
■乗るとどうか
まず発進時に緩い登りになっている出口でニュートラルにしてブレーキを抜いてみた。後ろに下がる。Dに入れる。微塵のショックもなく静止に向かい、やがて前に進み始める。これは高級だと思う。遊星ギア式のATも、トルクコンバーターをやめて湿式多板クラッチを採用すべきだ。
公道に出た瞬間も、印象はベーシックモデルと変わらず、ビターッと走るという印象。シフトロジックが引いてシフトアップなので、最初の交差点の減速操作に迷わずにすむ。そこから続く坂は、さすがに楽。1,500回転も回せば自然吸気モデルの最大トルクに達するため、日常生活では省エネ運転も求められるだろうし、それほど回す機会はないだろう。事実1,000回転すれすれでもシフトダウンせずに、またクラッチを滑らせることもなく走るフレキシビリティーは大したものだと思う。
Twin clutch-SSTは本当に違和感がなく、単軸のトランスミッションのような変速の瞬間の空走は発生しない。乗り続けていれば、いつかコンピューターがシフト選択に迷う場面に遭遇するかも知れないが、良くできている。下手をするとトルコン式のAT以上に、CVTのATくらいにその存在が希薄になる可能性すらある。Dレンジに入れておけば、減速時にも適度にエンジンブレーキを効かせるべくシフトダウンするので、余力を他に回せる。
一方パドルのロジックには二つのケースがある。まずセレクターがDからマニュアル側に倒れていた場合、完全にマニュアルシフト選択と同期する。セレクターがDのままの場合でもパドルは有効に働くが、Dからマニュアル側に倒れていた場合とは異なりDに戻るきっかけがない。いや、一旦Nに入れてもいいんでしょうが、設計側としては+パドルを引き続けることでDに戻すようにしている。オンボード表示では+を継続して引き続けているとだんだん変速ポジションの数字が大きくなっていきDに戻った。少しベンツっぽい感じ。
峠道に入る入り口のコーナーがとてもきついが、アンダーが出たと勘違いするくらい一杯回したスポーツバックに対してより舵は効いた。ステアリングギア比は共通だそうで、タイヤの太さも同じなので、あとは2駆4駆の違いとダイナミック特性を安定方向に振るシステム(ASC)の有無によるものだろう。さすがに3.5L級エンジンのトルクがあると、きつい坂道は余裕で登る。対向車が来ても、まるで来ることがわかっていたかのように素早くブレーキペダルを踏める。コーナーでもアンダーは出ない。が、やはり曲がりできつい坂ということもあって、2速で3,000回転を割るような場合に次の加速がもたつく。ターボというのは使う人次第なので、例えばDレンジでスポーツモードにしておけば人ならぬコンピューターが1速まで落として走ったのかも知れない。でも、それよりはMTでうまく高回転を維持して走るスタイルの方があっていると思いながらカタログを確認すると、ターボモデルにMTはなかった。少し残念。なお、信条としてMTを選びたい人には、このモデルより85万円ほど低価格な自然吸気モデルがセダンにのみ用意されている。
ビターッと走るのは同じで、動力性能については自然吸気モデルよりも確実に上ではあるものの、何か不完全燃焼めいたものを感じた。安定指向なエボリューションモデルは、全方位的な考察力を持った結果丸くなったという言葉で片付けられてしまった人のような哀愁も多少あったような気がするのである。
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