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Zとフーガ450GTの男らしさ対決
日本車の中では骨太と思われる2台の男度を比較する。 | 2006/07/27 |
■運転すると
フーガのアクセルペダルは日本車の平均からは重く、そしてストロークがたっぷり取られている。走り始めると、度を越えてゆっくりと加速する。これでいいんです。パワーをひけらかすような加速は、そのクルマの安全に対するスタンスを揺るがす。いや、あの、お尻がつべたいんですが。これは日産で言うエアコンディショニングシートのせい。人間の排熱機構は主に背中にあるので、シートバック側に効きを与えたほうがいいと思う。おなか冷やす人もいるかもしれない。冬は確かにお尻があったかいほうが嬉しい。
さて、往路は渋滞中。しかし室内は静かに過ぎる。このインストルメントパネルの向こう側に4.5Lもの大きなエンジンが回っているとは思えない。エアコンが、オーディオが、ナビが、全てが粛々とその与えられた使命を全うし続ける。これ、寝ちゃいませんかね?家族が寝る分には全く問題ありませんけど。運転好きにはちょっと寂しい気配の消え方だ。
やがて復路はZを全開にした場所。今回は前に3台もの車両。信号が変わってしばらく見ていると3台の距離が開いてきたので、加速を試みた。音が静かなせいか、あまり加速感が伝わってこない。5ATだからと言って変速が荒々しいわけでもない。3台のパスにウィンカーを出しながら進路変更を試すが、操舵感に少し人工的なものを感じた。しっとりとはしていない。だが危険と感じるものではない。重心もちょっとだけ高いだろうか。このあたりはスポーツパッケージの個体では感じなかったことだ。あまり大きなホイールもどうかと思い、買うなら非スポーツパッケージを、と考えていたのだが、この癖のような部分はボクにはなじめなかった。重要なブレーキも、急減速では問題ないが、ホントにうっすらと制動したいときのタッチに不満があった。ATは特筆ポイント。美しくセレクトダウンが決まる。過不足ないスロットルコントロールで全く車体がギクシャクしなかった。
ディーラーにたどり着いた後、あの人工的な操舵感が気になってステアリングホイールを何度か切ってみた。ちょっと回転方向のダンピングが弱いかもしれない。もう少し締め上げた方が安心だと思う。静かで乗り心地もよく、間接風の出る除菌エアコンやパワーオットマン、死角を減らす左サイドやリアのカメラなど、気が効いていることは間違いなく、それは実用上優れたものだ。これらのことから、順番が逆な感じだが、エルグランドをセダンにした場合こうなるという気がした。エルグランドがセダンになることで得るもの、失うものを想像して欲しい。容量は減るものの、運動性能は格段に上がる。エルグランドの「大黒柱観」をセダンに持ち込んだことで現代的な「父親」の姿を投影した、それがフーガのコンセプトなのかもしれない。
■室内
4.5Lモデルの追加に伴って、特に気になっていたフェイク=木目調の室内トリムパネルを本木目のものに全車切り替えている。実際に見てみると、それはそれまでの木目調との違いをほとんど見出せないが、このマット仕上げの樹脂パネルの向こう側にリアルウッドが眠っていると思うと本当に安心する。そして、それはフーガがそういう人に向けて少し方向修正したことを意味する。ブランドの持つ底力は、魔法でもなんでもない、妥当な根拠の積み上げによるもの。スポーツパッケージではギラギラするフットペダル類もこちらでは落ち着いている。この方向性で進んでいけば、ライバルとは違った通好みの印象を築くことができると思う。
<特別付録>
排気音をどうぞ。
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